会期が長いとつい後回しにしてしまって、行きそびれてしまうことが多々あり、行きたいと思った時にやっぱりすぐ行くべきなんだなぁと思います。

塩田さんの展示も開催前に10月末までやるなら夏が終わって涼しくなったら行こう、なんて思っていたらあと一週間で会期終了ということを知り、慌てて行ったのでした。

塩田さんはベルリンを拠点に活躍されているアーティスト。
25年にわたる活動の集大成とも言える大規模な今回の展示は、入館者数を70万人突破するかもしれないと言われるほどの人気の展示となりました。

初期の頃は彫刻から始まり、自身が土の中や泥の中に入るインスタレーションなどが多く、徐々に糸を使った代表作へと移行して行きます。

繊細な針金の彫刻作品から始まります。
塩田千春 手の中に (2017年)

絵はインスタレーションに移行していったせいなのか、あまり描けなくなっていたようですが、所々に飾られているイメージ画やドローイングがとてもエモーショナルな作品として見えて、とても好きでした。

鉄枠で作られた船と空間全体に絡まりつつ張り巡らされた赤い糸の空間。

塩田千春 不確かな旅 (2016年)

同様の形式で塩田さんは黒い糸を用いることもあるのですが、赤は人と人を繋ぐ赤い糸のようなもの、または血液だそうで、黒は広大な宇宙を意味しているそうです。
実際に体の周りに血液のような赤いものが通るチューブを絡ませたインスタレーションも動画で流れていました。
身体性、言葉にならないような感情、頭では思い出せないけれど皮膚が覚えているような記憶、など形にならないものや体験をどうにか表現していくこと、かつ、それをこのような大規模なインスタレーションにすることで他者にも疑似体験のようなものを感じさせているように感じました。
赤い糸や黒い糸の中に入っていると、まるで塩田さんの体内に取り込まれたような、宇宙の中にいるような、不思議な感覚を味わえます。

塩田千春 静けさの中で より (2008年)

ドレスを使ったインスタレーションは何作かあるそうですが、こちらの〈時空の反射〉は見ていて少し混乱してしまいました。

塩田千春 時空の反射 (2018年)

中に鏡があることはわかるのですが、周りを歩いていると、どこに鏡があるのかドレスは本当に一体なのか、黒い糸に自分自身も絡め取られているような不思議な錯覚を覚え、実像と虚像のあやうさを感じさせられます。

塩田千春 内と外 (2009年)
塩田千春 集積ー目的地を求めて (2016年)

生命、存在、記憶など全ての人に当てはまるテーマを主として、生きることの意味や、魂とはなにかと考え、作品として表現してゆく。
塩田さんの人生やものすごいバイタリティを通して生み出された作品たちは力強く、私たちの心に響いてきます。

塩田千春展 魂がふるえる
会場 森美術館
会期 2019.6.20~10.27
以降巡回予定